· 

由貴のJazz部屋vol.15 Nina Simone

ニーナの考え方で興味深いのは、いわば、スピリット(精神)としてのジャズと、音楽としてのジャズを分けているところだと思います。

 

彼女が「ジャズシンガー」と呼ばれるのを否定し、もし自分を名づけるならばフォークシンガーだと呼ばれるべきだと述べていたことは前述しましたが、ビリー・ホリデイの歌唱によって有名だったI loves you, Porgyをニーナが歌うことで、すぐにビリー・ホリデイと比較する人々のことを、ニーナは”Porgy people(ポーギー・ピープル)"と呼んで嫌悪していました。

 

以下、ニーナの文章の引用です。

 

―――

 

I loves you, Porgyは、わたしのレパートリーの中の1曲に過ぎないし、わたしが演奏するのを一度でも聴いたことがある人なら、ビリーとわたしがまったく違うことがわかるだろう。わたしが嫌だったのは、人々が、ビリーとわたしはふたりとも黒人だという固定観念から逃れることができていないということだった。仮にわたしが白人だったら、誰もわたしとビリーを結び付けようとはしなかっただろう。

 

また、わたしはほかのジャズシンガーとひとくくりにされるのも嫌だった。

 

なぜなら、わたしの音楽は、ほかのひととは全く異なるものだったし、その独自性において優れていたからだ。わたしをジャズシンガーと呼ぶことは、わたしの音楽的なバックグラウンドを無視することに等しかった。なぜなら、わたしは、白人たちが、「黒人ならこう演奏するに違いない。」と思っているやり方では演奏してはいなかったからだ。

 

「彼女が黒人ならジャズシンガーに違いない」と考えるのは、人種差別だと思う。

 

そういう差別的な人々の考え方は、わたしを打ちのめした。

 

ちょうど、ラングストン・ヒューズ(ニーナとも親交の深かった作家。ハーレム・ルネッサンスの父とも呼ばれている)が「偉大な黒人詩人」と呼ばれて打ちのめされたように。

 

彼が偉大な詩人であるのは、彼自身に由来するもので、肌の色はそれになんの関係があるだろうか。

 

                        (”I put spell on you”,p.69)

―――

 

「黒人」という固定観念の中で、自分の音楽がひとくくりにされることへの強い怒りと失望が綴られています。

 

I loves you, Porgyは、”Porgy and Bess"というミュージカルの中の曲で、ビリー・ホリデイ、ニーナ・シモンの他にも、たくさんの方が演奏しています。

 

素晴らしい演奏がほかにもたくさんあるのですが、いくつかをご紹介します。

 

ご興味がある方はいろいろ聴き較べてみてください。

 

 

 

こちら、番外編。

 

シンガーソングライター、畠山美由紀さんのアルバム、”Fragile”にもI loves you, Porgyが収録されており、素敵な演奏です。

 

アレンジとピアノは中島ノブユキさん。

 

美由紀さんは、尊敬する歌手にNina Simoneを挙げておられ、このアルバムの中でも、The Shadow of your smileなど、ジャズのスタンダード曲も歌っておられます。